研究概要 |
動作中に振動を発生しやすい薄板状の構造物に対して,振動減衰能を向上させる方法をいくつか開発した.技術的にはきわめて簡便な方法で,コストもそれほど必要としない.薄板の表面に両面粘着テープを貼付した構造物をモデル化し,自由振動に対する偏微分方程式を作成した.この解から両面粘着テープによる減衰能向上を確認し,粘着テープの特性を明らかにした.粘着テープのせん断変形に対する抵抗特性(せん断ひずみ速度係数)が重要である. 次いで,実際の構造物の減衰特性を測定し,両面粘着テープ貼付による減衰能向上を確認した.この実験結果と偏微分方程式に基づく解析結果を突き合わせ,粘着テープのせん断ひずみ速度係数を推定した.この推定値は,振動中の動的状態に対するものである. 実際に粘着テープのせん断ひずみ速度係数を実測するモデル実験も行ったが,せん断ひずみ速度域が小さく静的特性と考えられる値しか求められなかった.しかし,動的推定値と静的推定値の間にはよい直線関係が認められ,静的に推定したせん断ひずみ速度係数が大きい粘着テープほど減衰能向上効果に優れているとの結論を得ることができた. 以上の結果はインディシャル応答によるもので,強制振動に対する効果については別途検討する必要がある.正弦波加振あるいは三角波加振における減衰能向上についても検討した.加振点と構造物の間が直接接触しているため,摩擦力により減衰能がかなりの影響を受ける.しかし両面粘着テープの貼付により,減衰能が向上することは確認できた.ただし向上の程度は低い. 最後に薄板の表面に無電解めっき膜を付けたときの減衰能についても検討した.どの材質のめっき膜を付けても減衰能は向上する.しかしめっき膜の中に,例えば硬い炭化珪素のような異物を分散させることで減衰能が格段に向上することが明らかにされた.
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