研究概要 |
1.準静的条件下でのトラクション油のレオロジー特性と機械的性質 潤滑油の高圧密度の測定結果に基づく状態図を基礎とし,固体側のアプローチとして,自由体積の推定と自由体積の温度-圧力関係の確立,ならびに実測自由体積をもとにした粘度-温度-圧力,密度-温度-圧力関係式の構築を試みた.その結果は,実測値とほぼ一致し,高圧密度計測をもとにした高圧粘度の予測が可能であることを明らかにした. 2.トラクション油の高圧物性とトラクション特性 トロイダルCVT実機に現れるような高面圧(〜平均ヘルツ面圧2GPa),高周速(〜30m/s),高温度(〜120℃)という過酷な条件下でのトラクション特性を明らかにするため,まず,トラクション油の2GPaまでの状態図の作成を行い,それを基に弾性論の基本的物性である体積弾性係数,せん断弾性係数と油分子の凝集状態との対応を整理検討し,さらに,2円筒試験,4円筒試験によるトラクション特性を総合的に検討した.その結果体積弾性係数,せん断弾性係数,限界せん断応力等の機械的性質およびトラクション特性が油分子の凝集状態のパラメータである粘弾性固体転移温度T_<VE>と油温Tの差T_<VE>-Tで整理できることが分かった. 3.打撃圧痕法による瞬間的高圧条件下でのトラクション油のレオロジー研究 衝撃試験で得られた塑性圧痕プロフィールの解析より,潤滑油の固化が均一相で生じる場合と分散相で生じる場合の区別が可能であること,また,均一相から分散相に転換する際にはマランゴニ効果が大きい役割を演ずることが推察されること,さらに,塑性圧痕の曲率半径が界面化学的性質によって規定されることが分かった.塑性圧痕の精密解析は短時間に通過する過渡現象のレプリカ観察であり,瞬間的に発生する高圧条件下での潤滑油の挙動解析を可能にすることが分かった. さらに,本主題用として出光興産(株)から界面特性の大きく異なる潤滑油を提供頂いた.従来,打撃圧痕をレーザー変位計(平成12年度購入)で検査するいわゆる考古学的手法で,瞬間的高圧条件下のレオロジー特性の推定を試みていたが,ここでは,打撃時のAE(アコースティクエミッション)波形も同時観測することで,さらなる情報収集を目差した.その結果,打撃試験時のAE継続時間から瞬間的高圧条件下でのαη(α:粘度圧力係数,η:粘度)の推定が可能であること,またAE実効値に接触角(平成13年度購入の接触角計で計測)および境界潤滑条件下の摩擦係数が影響することを明らかにした.
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