研究概要 |
定常流型人工心臓をより長期間使用するうえで大きな問題となっているのは,軸周辺部での血栓の生成,血液の漏洩と発熱などである.これらを解決するために,生体適合性が高く,小型・長寿命・高性能な血液密封機構を開発・研究する必要がある.本研究は,人工心臓用に開発されたメカニカルシールを対象として,血液の軸シール特性を明らかにすることを目的とする. 実験では,密封溶液としてHt値を40[%]に調整した豚の血液・Mg水溶液,冷却水としてMg水溶液・純水を用いて実験を行った.実験後,密封溶液および冷却水のサンプルを酸分解で処理し,ICP(誘導型結合プラズマ)発光分析器を用いてCaとMgの濃度を測定することによって漏れ量を算出した.実験の結果,クーリングウォータの漏れ量の方が,密封溶液の漏れ量より約0.008[ml/h]多いことがわかった.また,メカニカルシール摺動面を通じての漏れ量は,約0.025[ml/h]で時間比例的に増えることがわかった.そして,双方向とも少量であり,本研究で用いたメカニカルシールは血液ポンプ用として充分な密封能力を持つ事が分かった.さらに,ICP発光分析器を用いた手法は,漏れ量測定の評価方法として最適である事が分かった.
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