研究概要 |
濃厚サスペンションとコロイドで見られる粒子の構造化を流体の機能として利用するために,流動構造の解明とその影響について検討した。 濃厚サスペンションについては,まず,回転振動する平行二円板間の流れで見られた流動再構造化について調べ,構造化過程はせん断速度などには依存せず,ひずみ量だけにより定まる固体的な現象であることを明らかにした。また,構造化後の見かけの粘度は非定常性の影響が現れ,周波数が高い場合の方が見かけ上粘度が低くなり,特にその傾向は単分散系の方が強く現れることを明らかにした。そして径の異なる2種類の粒子からなる2分散系のサスペンションの振動流で見積もられる粘度は,粒子径の分布に対し定常流の場合と異なる変化を示すことを解明した。また,スクイーズ流れでは,繰り返しスクイーズ運動を加えることにより降伏応力が増加し,固体的特性が強くなることがわかった。また,この現象に対する粒子形状,スクイーズ速度などの影響を検討した結果,スクイーズ流れでは、濾過効果により中心付近で粒子密度が高くなり、凝集構造を形成し、繰り返しにより凝集構造が徐々に成長することがわかった。 コロイドに関しては微小孔を通過する流れに脱塩処理したコロイドと塩を加えイオン濃度を調整した系を流し,流量の安定性を検討した結果,安定性と流動抵抗の変化にはコロイド粒子間に働く斥力による不安定性とコロイドの凝集の影響が大きい事が確認できた。また,コロイドを微小孔に通ずる際、無次元余剰圧力損失を計れば、コロイド粒子の凝集で微小孔が閉塞するか否かを判定できることがわかった。これは、閉塞する前にはオリフィス壁近傍の流動が変質して、オリフィス流れがベンチュリー管流れのようになっており、圧力損失が大きくなるためと考えられる。 この濃厚サスペンションおよびコロイド溶液で解明された特異挙動は各々の機能性を検討する際の有用な情報となると考えられる。
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