研究概要 |
本研究においては,高精度環境予測シミュレーションの基盤となるアプローチ手法として(1)可変精度線の方法,(2)仮想境界デカルト格子法を採用した. 可変精度線の方法は,1つのパラメータを変化させることにより任意の空間精度が達成され,さらに,エネルギ等の2乗量の保存性も有する手法であり,仮想境界デカルト格子法は、従来の境界適合座標系ではなく最も単純なデカルト座標系を用い境界が格子線に一致しないような幾何学形状の流れ場を解析する方法であり,座標変換を実施しないために計算効率が向上する手法である. また,環境予測はある程度の分解能をも必要とするために,数値解の分布に対応して自動的にデカルト計算格子を細分化する局所細分化法を組合せることにより,分解能の向上を図った. 環境シミュレーションは,流入・流出を伴う流れ場であることが多いために,流入・流出が存在する流れ場を対象に上述のシミュレーション手法を用いて基礎的環境シミュレーションを実施した. 最初に,局所細分化法の有効性を検証するために,2次元円柱まわりの非定常流れのシミュレーションを行い,細分化しない場合と比較して計算時間が2/3に短縮可能であることを実証した. さらに,3次元単一球及び複数球まわりの流れへの適用を実施した. 単一球まわりの流れにおいては,レイノルズ数1000の流れにおいて層流から乱流への遷移過程をシミュレーションすることが可能であることが定性的・定量的に示された. また,複数球まわりの流れにおいては,レイノルズ数500の流れをシミュレーションし,各球から放出される渦の干渉をシミュレーションすることができた. これらの研究成果は,世界的に権威のある国際会議で発表され,これからの計算流体力学の1つの方向性を示すものであるとの評価を受けており,環境予測シミュレーションに対して充分適用可能であることを定性的・定量的に実証することができた.
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