研究概要 |
固体表面の性状により,固体表面における気体分子の適応係数,固体に働く応力,表面に伝わる熱流がどのように変わるかを,固体表面として白金,気体分子としてXe, Arを取り,二平面間の気体に対し,気体分子の動きに対してはモンテカルロ法を,また,気体・固体分子の干渉には分子動力学法を用いて調べた。表面性状としては,滑らかな場合,分子の大きさ程度の粗さがある場合,分子的スケールの溝がある場合,表面に異分子が物理吸着している場合などを取り扱っている。上下の板が異なる速度で動くクエット流れと上下の板の温度が異なる問題を解析した。取り扱っている壁の温度を300Kとしている。解析により,次のような結果を得た。 清浄かつ滑らかな表面において,Ar気体分子の接線方向連動量適応係数は0.19であり,一方,Xe気体では0.81であった。また,温度適応係数は,Ar気体で0.49,Xe気体で0.85である。実験では,温度適応係数が,それぞれ,0.55,0.858であることから,現在の解析がほぼ妥当な値を実現している。さらに,Xe分子が物理吸着の状態にある白金表面におけるAr分子の温度適応係数は0.73であり,この値は,特に浄化していない白金表面でのAr温度適応係数の実験値0.85に近い値となっている。白金表面に分子的な大きさの粗さがある場合には,Ar気体に対する接線方向運動量適応係数は0.74となり,また温度適応係数は0.37であることが示された。この場合の上壁の温度は360Kとしている。この上壁の温度を変える場合,清浄かつ滑らかな表面とXe分子が物理吸着の状態にある表面においては,温度適応係数は,温度の上昇に伴って,減少するが,表面が粗い場合には,下壁温度との差が小さい場合には,温度適応係数は小さくなり,断熱効果のあるということが示された。これは,表面の粗さが気体分子を跳ね返し,壁とのなじみを弱くしていることによるものである。 なお,分子的スケールの溝がある場合には,溝の方向によって接線方向運動量適応は異なり,その係数は,溝に平行な場合0.37,垂直の場合には0.55となっている。
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