研究概要 |
空気圧機器から発生する空気圧騒音は,高周波数成分が多くかつ非定常に発生する特性であり,うるさい騒音である。一般的に,空気圧騒音を定量的に評価する場合,騒音レベルが広く用いられる。しかし,騒音レベルを低下した空気圧騒音をうるさく感じる場合があり,新たな評価量を検討する必要がある。そこで,12年度の研究では,空気圧騒音を聞いた人間の脳波に,うるささの感情が反映するものと考え,これに基づく騒音の新たな評価方法,すなわち感性評価を取り入れた方法を提案することを目的とした。 空気圧用消音器により減衰した騒音を音刺激として被験者に加えたとき,脳電位を測定した。α波とβ波に周波数分析した結果,音刺激がある領域では,α波が抑制され,β波の低周波成分であるβ1が,広い領域で連続的に高い電圧を示した。特に非定常音では,定常音に比べ被験者に与える不快感が強い。不快感が前頭連合野の皿電極で得られたβ1の脳電位に反映されると考え,まず定常音ついて考察した。感覚の強さと,人間に加えられる刺激の強さはスティーブンスのべき関数で表される。前者にβ1の電圧を,後者に音圧を代入し,この関係式を求め,定常性の空気圧騒音に対するうるささの比較が可能となった。 また,13年度の研究では,定常性の空気圧用消音器から発生する騒音が,人間の自律機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 空気圧用消音器により減衰した騒音を被験者に聞かせると,騒音のない場合と比べ,心拍数が上昇し,R-R間隔変動係数CV_<R-R>は大きくなる。さらに,呼吸数が増加し,精神性の発汗が認められた。音刺激による脳への入出力を考えることにより,上述の自律機能の変化を考察した結果,空気圧消音器から発生する騒音が人間に不快な情動を生じさせ,心拍,呼吸,発汗などの自律機能へ影響を与えることを明らかにした。 今後、非定常性の空気圧騒音についてさらに検討する。
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