研究概要 |
本研究は,噴孔より気流中に噴射直後の液柱表面に初生した乱れが気液の相対速度によって増幅し,分裂に至る過程を実験的ならびに理論解析によって明らかにし,実測値を必要としない汎用性のある噴霧流動数値シミュレーション構築のため,噴霧生成のモデリングを行うことを目的としている。 まず線形安定性理論を用いて液柱表面上に発生する波の波長と成長速度の関係を,周囲気流速度をパラメータに求めた。次に,ピエゾ圧電セラミック素子を用いて,噴孔より噴射時の液柱に振動を与え,液柱表面上の乱れの挙動を写真により観察した。さらに,噴射弁下方に赤色光シートを照射し,透過光量の変動から噴霧濃度の時間的変動を求め,これを周波数解析してピエゾ素子に与えた加振周波数との関係を調べた。以上の実験結果をもとに,噴霧生成モデルを新たに作成し,これを用いて液柱の分裂長さおよび生成噴霧の平均径を計算し,既存の実験式と比較した。その結果,以下の点が明らかとなった。 (1)成長速度が最大となる変動波の波長は,相対速度の増大とともに両対数グラフ上でほぼ直線的に減少する。一方,その成長速度はほぼ直線的に増大する。 (2)気流中に液柱を噴射した場合,気流速度が小さい条件では,噴霧濃度の変動成分中に5kHz以下の低周波数成分と10kHz付近の高周波成分が混在し,気流速度の増大とともに10kHz付近の高周波成分が強くなる。さらに気流速度が増大すると,あらゆる周波数成分の波が現れるようになる。 (3)気流速度が17.7〜44.2m/sの条件では,噴霧濃度の変動成分中の10kHz付近の高周波成分は,ピエゾ素子により加振した方が小さくなる。気流速度がかなり大きくなると,加振した方がより上流から噴霧生成が行われるようになる。 (4)本研究で提案した噴霧生成モデルよる計算によれば,分裂長さは実験式にほぼ一致し,生成噴霧の平均粒径は,気流速度の極小さい条件を除けば,実験式にほぼ一致する。
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