研究概要 |
本研究者は従来の研究において,熱伝導率の比較的小さい水平冷却板を用いて水溶液を凍結させると,凍結層が浮力の作用により冷却面から自然に剥離し,冷却面が常に露出した状態で凍結現象が実現できることを見いだした.本研究は,その現象の応用・発展のための基礎資料を得ることを目的とし,主に以下の検討を行った. 1.鉛直円筒面における凍結剥離現象の解明 塩化ビニル製の鉛直円筒内部を冷却して2〜10wt%エチレングリコール水溶液の凍結実験を行った結果,円筒面においても凍結層の剥離現象が生ずることを確認した.このことは例えば,氷蓄熱槽下部に多数の冷却円筒を設置することにより凍結量を増加させることの可能性を示唆した.また円筒長さの影響について調べた結果,円筒が長くなると凍結量は増加するが剥離しにくくなり,円筒長さに適切な値があることを示した. 2.円管内流動水溶液の凍結と剥離現象 氷結晶の剥離現象のより実用化に向けた研究として,円管内を流れる水溶液の凍結・剥離現象について実験を行い,流速及び冷却条件が剥離現象にどのように影響するかについて検討した.その結果,流速を遅くすると凍結量は増加するが,さらに遅くすると冷却面から氷結晶が剥離せず凍りつくことを明らかにした.また流速を速くすると凍結量は減少し,さらに速くすると氷結晶が生成されないことを示した.これらのことから,リキッドアイス製氷には最適な流速・冷却条件があることを明らかにした. 3.凍結剥離現象に及ぼす冷却板厚さの影響 塩化ビニル板の厚さを0.5〜3mmに変化させて凍結剥離現象を調べた結果,1.0〜1.5mmの厚さにおいて剥離しなくなる限界の冷却熱流束が最も大きくなり,すなわち最も剥離しやすいことを明らかにし,本現象をリキッドアイス製氷に応用する際の重要な指針を得た.
|