研究概要 |
本研究では,「平面せん断流の流れ方向に規則的に発生する組織構造」および「微細線径円柱列の後流」という二種類の実用的な乱流場における火炎伝播を詳細に観察し,乱流燃焼促進機構において重要な役割を果たしているボルテックス・バースティング(Vortex Bursting)に対する隣接渦の影響を調べた.平成12年度にはプロパン・空気混合気で形成された組織構造を対象にし,平成13年度にはプロパン・空気混合気の円柱後流を対象にした.2年間の研究で得られた成果は,以下のように要約することができる. 1.プロパン・空気混合気の平面せん断流中の組織構造の渦中心で点火した場合には,点火位置から渦管軸に沿う火炎伝播加速(Vortex Bursting)が明確に観察された.渦内部での伝播が終了すると,上下流に位置する組織構造に向かう角状の火炎の突起が現れ,速やかに隣接渦方向に伝播する.それに対して,渦と渦の中間点で点火した場合には,まず隣接する渦間の巻き込み作用により伝播が加速され,S字状の火炎が形成される.この伝播加速は,渦中心点火の場合の隣接渦方向の速やかな伝播とまったく同じで,「渦周方向の巻き込み作用による後押し:Vortex Boosting」が推進力となる.S字状火炎の先端が隣接渦に侵入すると,ふたたび、Vortex Burstingによる渦軸方向の火災伝播が加速される.このように,二種類の火炎伝播の加速機構(Vortex BurstingとVortex Boosting)が存在し,実用乱流場における火炎と渦の相互干渉過程において隣接渦の影響が重要であることを明らかにした. 2.プロパン・空気混合気で形成された円柱列の後流は,通常の乱流場と線径に対応して卓越したスペクトルを有するカルマン渦列の重ね合わせによって表現される.このような擬似乱流場に火花点火により発生した初期火炎に対しては,乱れスケールの増大に伴って,局所的に細かく乱された形態から全体が変形するような形態まで変化する.この場合,隣接する多数の渦に起因する激しい混合冷却と伸長による冷却作用が火炎伝播を抑制し,反応性の低い混合気の場合には消炎に至る.
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