研究概要 |
熱対流場の数値シミュレーションは,乱流モデルの信頼性等まだ問題は残るものの,ほぼ実用化の段階に入ったと考えられる.しかしながら,これを最適設計ツールまたは最適制御ツールとして利用しようとすると,ある状態における感度(設計変数の微小変化に対する目的関数の変化)を求めるだけでも場のシミュレーションを膨大な回数繰り返す必要があり,現在のコンピュータでも非力である.そこで本研究では,場の基礎方程式を直接シミュレーションするかわりに,その随伴問題を設定し,これを数値シミュレーションの手法を用いて求めることにより直接感度を求めることを提案した. 本研究で得られた知見を以下にまとめる. 1.強制対流熱伝達問題に対しては,そのエネルギー方程式の線形性から直接随伴方程式が得られ,任意の時刻における最適熱的境界条件が高々1回の随伴系に対する数値解析結果から得られる.本研究では,矩形キャビティ内の強制対流場を対象として,熱的境界条件の空間的な最適化と時間的な最適制御結果を示した. 2.形式的な摂動法を導入することにより,一般的な非線形対流熱伝達問題に対しても随伴方程式系を構成することができ,この随伴方程式系を数値シミュレーションの手法で解くことにより,任意の境界摂動に対する感度が得られる.そして,この感度を勾配型最適化法に適用することにより,種々の伝熱特性に対する最適境界条件を得ることができる.本研究では,矩形キャピティ内の自然対流熱伝達問題および複合対流熱伝達問題に対して数値的検証を行い,従来の直接数値シミュレーションを用いた方法に比べ著しく計算負荷の小さな境界条件の最適化が可能であることを示した.
|