研究概要 |
二重拡散自然対流は重力場で温度差ならびに溶質濃度差の二つの原因から密度差が生じ浮力となって流れが発生・持続するもので,工学的にも結晶成長,リキッドアイス蓄冷材の融解,液化天然ガスタンク内におけるロールオーバー現象,水および大気環境などいろいろな場でこの現象の存在が考えられる.大気,河川,湖水,海洋などにおける汚染物質の拡散は熱と物質の移動を伴う複雑な二重拡散になる場合が多い.いろいろな環境での汚染物質の移動メカニズムと発生条件を熱と物質の二重拡散の面から数値解析した結果を述べる. (1)混合現象 河川では工場温廃水と河川水との混合があり,そのとき川底での塩水楔による塩害や密度の低い高温塩水の河川水の表面への流れ込みにより周辺環境に大きな影響を与えることが考えられる.また河川水の表面に流れ込んだ工場温廃水は熱拡散により密度勾配が不安定となりソルトフィンガー,熱プルーム,インターリービング現象などを起こし速やかに工場温廃水と河川水との混合が行われる.このような二重拡散を伴う混合現象の数値解析をした.その結果,このような現象の発生には浮力比が大きく関与した. (2)プルーム現象 大気環境での二重拡散自然対流としては,サーマルプルーム,煙突からの煙,大気中への有害ガスの流出,都市の温暖化等が考えられ,いずれも環境に対し重大な影響を及ぼす.多くの場合,上昇流(プルーム)ができ有害物質が環境に放出される.ここでは二重拡散を伴うプルーム現象或いはベナール対流を数値解析した.煙突からの煙,大気中への有害ガスの流出,都市の温暖化,海底火山等では上昇流(プルーム)ができ有害物質が環境に放出される.このような二重拡散を伴うプルーム現象の数値解析をした.その結果,下面すべてを加熱すると,下面近くに濃度成層ができ,それが少しずつ変形し中心の強い1つのプルームと周辺の複数の弱いプルームに成長した.下面の一部加熱では温度成層ができず1つあるいは4つのプルームが下面から早く成長した.一部加熱の方が全面加熱より物質移動は強くなった. (3)水溶液中での凝固濃縮 水の凝固・融解による蓄熱を利用して夜間電力の平準化が行われている.水の代わりに廃水を用いることにより有害物質の濃縮も同じに行なうことが研究されている.水溶液の側面あるいは表面から凝固が起きる場合の数値解析を行なった.その結果,側面からの凝固では,相境界近くに薄い濃度境界層ができ溶質は系の下部に蓄積された.上面から凝固させると,ソルトフィンガー現象が発生し溶質は系の下部に蓄積した.フィンガー発生のパターンは浮力比や凝固速度により大きく異なった.
|