研究概要 |
回転機械の運転中には周期的な力の負荷が避けられないため,疲労によりクラック(き裂)が発生する可能性が大きい.それを早期に発見する振動診断システムの開発を目的とした. 既存の研究の多くは,回転軸にクラックが発生すると,その非線形性に起因して,主危険速度の分数倍や整数倍などの回転速度(副共振点)近傍で非線形共振現象が起きることに注目している.しかし,回転機械の定格回転速度がこれらの共振位置に一致する可能性は小さく,したがってそれらの方法ではクラックの発生を検知することは困難である. そこで本研究では,各種の共振点から離れた回転速度で定常運転中に,クラックの有無の判定,およびモード形状あるいはモード成分の分布割合からクラックの位置の特定する方法を開発する方法を検討した.その第1段階として,回転軸系に磁気軸受を組み込み,稼動中に周期的電磁力を加えてその周波数を変化させ,そのときの系の応答の大きさ,スペクトル成分の種類などからクラックの発生を検知できるかを調べた.その結果,(1)周期的励振に対する応答として,クラックに特有な共振が発生すること,(2)クラックに起因する係数励振作用と非線形特性,および重力の相乗作用により,軸の回転速度ω,励振力の振動数Ω,系の固有振動数pの間に特別な関係があるときにそれらの現象が発生すること,(3)さらにこれらの共振現象に注目すればクラックの検知が可能であることを明らかにした.なお,加振する位置と発生するモード成分の大きさなどの関係からクラックの位置を知る方法については,現在引き続き検討中である.
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