研究概要 |
本研究は,「面駆動型空気圧ソフトアクチュエータを用いた介護支援ベッドの開発」を課題として平成12年度〜平成13年度の両年度にわたって日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))を受けて行われた. 研究代表者らが開発している面駆動型ソフトアクチュエータの原理を応用して,ゴムボールを用いた空気圧駆動介護支援ベッドを開発した.ゴムボールの組み合わせは上下2段構造であり,409個のソフトテニスボールにより構成される.上段ボールが人体と接触し,下段のボールはベッドの用途によってそれぞれ異なる役割を果たす.本研究では,床ずれ予防を目的とした体圧分散・体位変換を実現するため,開発したベッドの体圧分散作業および体位変換作業を実験により考察した. 1.体圧分散作業 下段ゴムボールの内圧を一定に保持した状態で,上段ボールの内圧を増減させる.内圧の増加により膨張した上段ボールに接する部位の体圧は上昇し,内圧の減少により収縮した上段ボールの部位では体圧が低下する.したがって,上段ボールの内圧を制御することにより,人体のそれぞれの部位に作用する体圧を調整することが可能である.これにより,本ベッドは床ずれ予防に有効な体圧分散制御が実現できる. 2.体位変換作業 面駆動型ソフトアクチュエータの搬送機能を利用することにより,ベッド上に横たわる人体を2.5mm/s程度の速度で搬送可能であることが確認された.そこで,ベッドを縦(長軸)方向に3分割し,それぞれの部分の搬送方向を縦横に変化させることにより,床ずれ防止のための代表的な体位変換である30度側臥位の実現を試みた.これに対して,研究代表者らが独自に開発した空気圧ソフト触覚センサを用いて肩部・腰部の体圧分布を測定した.その結果,30度側臥位とほぼ同等な体圧分布が得られ,開発したベッドの体位変換作業の支援への応用の可能性が示された. 以上により,本研究で開発したベッドを用いることにより,床ずれ防止に十分効果的な体圧分散・体位変換作業が可能である.なお,現状では,人体の搬送を行うためベッドと人体の接触部にアクリル樹脂板を挿入しているが,ソフトアクチュエータの特徴を活かすためにはより柔軟なゴムシートなどの使用が必要である.さらに,車椅子などへの移乗作業の支援など機能の拡張も今後の課題である.
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