研究概要 |
製鉄所,電気鉄道などの電力負荷は,不規則に変動するピーク負荷である.従って,それら電力負荷に給電するための電力設備は,負荷が消費する電力の平均値に比較し大容量なものが必要となる.そこで,超電導エネルギー貯蔵装置(SMES)を需要地近傍に設置し,負荷の電力変動に基づいてエネルギーを吸放出させることにより,電力を平準化することができれば,電力設備の小型・小容量化,さらに電力設備における電力損失の低減も期待できる.このような視点からSMESを用いた電力平準化の研究を進めた. 新幹線変電所における電力変動をSMESを用いて平滑化する制御法とその効果について検討した.制御はファジィ理論に基づいた方法で,変電所変圧器の二次側に設置するSMESのエネルギー容量,変動する電力を平滑化する度合い,ファジィ制御におけるパラメータであるスケーリングファクタの決定方法を検討した.これらを決定するために,変動する電力を平滑化することにより得られる効果である電力設備低減と電力設備での電力損失低減を指標として用いた.その結果,検討した変電所の電力変動について,エネルギー容量が2.8MWhのSMESを用い,変動する電流を600A以下にするスケーリングファクタを決定し,平準化制御シミュレーションを行い,56%の電力設備低減と30%の電力設備での電力損失低減が可能であることを明らかにした. 次に,製鉄所圧延工場の変動電力を平準化について以下の検討を行った。制御条件に応じて最適なメンバーシップ関数を得るため,ニューラルネットを用いてメンバーシップ関数をオンラインで自動構築する方法を提案した.これにより,これまでメンバーシップ関数を固定としていたファジィ平準化制御結果に比較し,1割程度の設備容量及び損失の低減が可能となった.さらに,平準化するために設置するSMES容量と平準化による効果とを最適化する手法を提案した.提案する手法は,遺伝的アルゴリズム(GA)に基づいたものであり,その評価関数をSMES容量(エネルギー容量と電力変換器容量)と平準化による効果(電力設備低減と電力設備での電力損失低減)で定義し,その評価値が最小になるファジィ制御のスケーリングファクタを決定した.そして得られた値を用いた平準化制御シミュレーションを行い,提案した最適化手法が有益であることを確認した.また,ニューラルネットワークの学習に影響する学習係数の値とSMES容量の最適化を行うため,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて,これらの最適な値を決定する方法を提案した.提案した方法により,それぞれの最適値を決定することができ,負荷変動の平準化制御を行うSMES容量の低減とニューラルネットワークの効率的な学習が実現できることを明らかにした.
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