研究概要 |
非晶質Fe-Cu-Nb-Si-B薄帯を張力下で結晶化させることにより.クリープ誘導磁気異方性を有する誘導し,低透磁率と低損失化を併せ持つナノ結晶金属系磁性薄帯を作製することができた.この薄帯への異方性誘導過程を研究した結果,結晶化進行時に大きな異方性が付与されていることが明らかとなり,結晶化進行時の熱処理条件を制御することにより単位張力あたりの異方性の大きさを向上させることができた. 次に.得られた薄帯からトロイダルコア(環状巻き磁心)を形成する方法について検討した.まず,種々のトロダルコア作製法についてトロイダル化による特性劣化の大小を検討した.その結果.低透磁率化した薄帯をボビンに巻き取ることによりコアを形成した場合に最も優れた特性のコアが得られた.そこで,この方法についてさらに詳細に検討した.その結果薄帯の飽和磁気歪定数,薄帯に誘導された異方性の大きさから決定される臨界コア径が存在し,トロイダルのコア径を臨界コア径より大きくすれば,コア形成による劣化が生じないことが明らかとなった. この結果に基づき,低磁歪のFe-Cu-Nb-Si-Bナノ結晶薄帯を用いて,直径1cmまでの低透磁率・低損失のチョークコイル用トロイダルコアを作製することに成功した.作製されたコアの磁気損失は,フェライトコアにおける損失より小さく,薄帯に対して計算された古典渦電流損失と一致した.このことは,コアの磁気損失が理論的限界まで低減されていることを意味している.また,開発されたコアには,フェライトコアに比べて2.5〜3倍の直流磁界を印加することができた.これは,開発されたコアがフェライトコアの3倍程度の飽和磁化を有することに起因している.
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