研究概要 |
本研究は代表者,八木がクボタと共同で開発したアモルファス粉末磁心の磁化機構を磁区観察を基に検討し,磁心の低損失化・高透磁率化を図ることを目的としている。 本研究では,当初,磁心の成形にはホットプレス法を用いていたが,ホットプレスは量産性に乏しく金型の寿命が短く価格高になる問題があるので,計画・方法を大転換して,量産性や低価格化を重視した常温(室温)における成形方法を新たに検討した。その結果,低軟化点ガラスをコーティングしたアモルファス粉末に極く少量の有機バインダーと潤滑材を添加・混合した粉体原料を,室温で加圧成形した後,460℃で15分間焼成すると,ホットプレス法によるアモルファス粉体磁心に匹敵する磁気特性が得られることが分かった。得られた磁心損失は100kHz,0.1Tの励磁条件で500kW/m^3,透磁率はMHzまで約100の値を示し,チョークコアやフライバックトランスコアとして実用化できることが分かった。 さらに,これら常温成形法によるアモルファス粉末磁心の磁化機構を解明するために、カー効果顕微鏡を用いたアモルファス成形体の磁区観察を試み,磁区の発生・成長,磁壁の移動・消滅などの磁区模様の観察に成功した。これまでの検討では,磁区模様の変化と高周波磁気特性の関係を詳しく論じることはまだ困難であるが,磁化曲線の緩やか立ち上がりは磁区の緩慢な成長・移動を反映していること,成形密度が高く透磁率が高い成形体では粒子間の静磁気的結合によって粒子間を渡る磁区が存在することなどの事実を確認するなどの基本的な知見が得られる成果があった。アモルファス粉末磁心の磁区観察の成功は内外共に本研究が初めてであり,今後,さらに詳しく調べるために新たな研究計画を立案・開始している。
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