携帯電話やPHSに代表される移動通信端末機器の形状は、半導体微細回路加工技術の進展や、市場サイドにおける可搬・携帯性の追求などに伴い小形化される趨勢にあるが、アンテナに関してはその性能が波長に依存することから、小形化の点ではまだ十分に開発の余地が残されている。本研究の目的は、この点をふまえ高誘電率セラミック材料の波長短縮効果を利用した新しいタイプのアンテナを提案し、その形状を従来のアンテナより小形化、更にはチップ化することにあり、比誘電率90のセラミック材料をもとに平面寸法2×1cm以下のアンテナを考案した。この小形アンテナは、プリント配線した高誘電率セラミック基板と低誘電率誘電体膜とを交互に積層した構造であり、その積層条件により放射効率が、配線の形状により偏波特性が、また給電方法により帯域特性が改善されることが実験的に明らかとなった。 次に自己補対形状を保持しつつ、進行波放射機能を備えた新しい動作原理に基づくアンテナを提案し、その開発を行った。このアンテナは自己補対形状のため極めて広帯域に動作し、上記セラミック基板でアンテナを作成した結果、500MHzから2GHzと比帯域400%で動作する超広帯域アンテナを試作することができ、かつ平面寸法も5×1cmと小形化に成功した。
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