研究概要 |
テラヘルツ波帯は光と電波の間に位置し、開発が遅れている技術の谷間であるが、未知の事象が眠る宝庫でもあるといわれている。この帯域の研究にとって広帯域波長可変コヒーレント光源は必要不可欠であるが、いまだ実用性の高いものは実現されていない。各種テラヘルツ光源の中で、原理的に最も広い波長可変性を有しているのは差周波光混合である。我々は、極めて非線形光学係数の大きい有機結晶DASTの大型結晶成長に世界に先駆けて成功し、さらにDAST結晶を用いた差周波光混合による波長可変テラヘルツ波発生を行った。その中でDAST結晶を代表的な非線形光学結晶(LiNbO_3,LiTaO_3,GaP, KTP)と比較したところDASTが特異的に光波からテラヘルツ波への高い変換効率を示すことが判明した。この際用いた2波長光源は800nm帯であり、DASTのコリニア位相整合条件を満たしていないにも関わらず他の結晶に比べて極めて高い変換効率を示した点に我々は着目し、コリニア位相整合条件を満たす波長1.3μm帯の光源を用いてさらなる高効率化を図った。 我々は、1.3μm帯の2波長光源として、シグナル2波長擬似位相整合光パラメトリック発振器(DSW-QPM-OPO)を試作した。この2つのシグナル波をDAST結晶に入射し、差周波光混合による高効率なTHz波発生に成功した。さらに、結晶の温度を変化させることにより、THz波の波長を120μmから160μmまで同調することが可能となった。また、DSW-QPM-OPOの励起光源であるNd:YAGレーザーの繰り返し周波数を高くすることにより平均出力の増大が可能であり、最高で5kHzまでの動作を確認した。
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