研究概要 |
本研究は,MPEG圧縮された動画像に対する検索手法の開発と実用的システムの構築を目的とし,以下の研究成果を得た. 1.検索システム全体のコンセプトとして,GUIを介したスケッチペース,特徴量ベースの検索方式を取った.また,MPEG符号化画像との親和性,処理の高速性等の理由を考慮し,検索に用いる特徴量としてマクロブロック単位の動きベクトルおよび平均色のヒストグラムを選んだ. 2.色および動きベクトルをシーン内でヒストグラム処理するとその時空間内での分布情報が失われる.この時空間分布情報を用いた検索を可能とすると共に,検索時間の短縮を図りフィルタリング的作用から詳細なマッチングに至る段階的な検索を実現するため,シーンを時間・空間方向に複数のブロックに分割してヒストグラム処理を行なう階層的な検索手法を提案した. 3.動きベクトルを従来の直交座標ではなく一種の極座標上でヒストグラム処理することで人間の視覚特性にマッチした距離評価が可能となることを視覚特性の測定に基づいて明らかにした.これを実際に検索に適用し,直交座標を用いた場合に比べ検索効率が改善されることを確認した. 4.動きおよび色ヒストグラムに基づく検索では,ユーザは対象物体と背景に関する情報およびカメラワークに関する情報すべてを入力する必要があるが,実際にはこれら全ての情報が常に得られるとは限らない.そこで,これらのキー情報の一部に欠損がある場合にもヒストグラムを用いたマッチング処理を可能とする手法を工夫し,ユーザの暖昧な記憶に基づく検索を可能とした. 5.昨年度および今年度得られた基本アルゴリズム,動画像のシーン分割法,GUIによるシーンのスケッチ入力部等を統合して動画像検索システムのプロトタイプを作成し,その検索効率を評価した.その結果,本システムにより特に動きに関してユーザ意図に近いシーンが検索可能なことが確認された.
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