研究概要 |
本研究では,信号を何時サンプリングするか,処理部の遅延時間はいくらにするか,出力を何時出すかなど,従来余り注目されていなかった信号の時間を新たな変数と考え,それを適応的に制御する新しいディジタル信号処理の可能性を検討したものである。その結果,主に加減算を基本にした以下のような新しいアルゴリズムおよびシステムを提案できた。 1.適応サンプリングレートによる周波数推定 (1)同期加減算処理による周波数推定:同期加減算の累積値の周期および並列同期加減算の累積値の違いからサンプリングレートを決定する周波数推定アルゴリズムを開発。 (2)適応ノッチフィルタによる周波数推定:サンプル値の差分で実現できるノッチフィルタにより,その振幅を零に,あるいは出力の零交差間から適応的にサンプリングレートを決定して周波数を推定するアルゴリズムを開発。 2.マルチレートサンプリングによる離散フーリエ変換 (1)マルチレート離散フーリエ変換:信号成分が倍数関係にある信号に対して,各成分の極値を加減算することを基本とした離散フーリエ変換のアルゴリズムを開発。1フーリエ係数当たり1乗算しか必要としないアルゴリズムである。 (2)くし形フーリエ変換:信号成分が倍数関係にない信号に対して,各成分を消去するくし形フイルタを基本にしたアルゴリズムを開発。従来の方法では,成分数Nの3乗0(N^3)の乗算が必要であってが,本アルゴリズムは0(N)でよい。 3.採譜システムの開発 (1)同期加減算処理による採譜システムを開発。 (2)縦続接続くし形フィルタおよび適応くし形フィルタによる採譜システムを開発。 (3)並列接続くし形フィルタと特異値分解,隣接出力の波形類似度に注目した採譜システムを開発。
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