研究概要 |
本研究では,多チャネル騒音制御の技術を用いて,遠隔会議における前処理部のノイズ除去についての応用研究を行うとともに,この多チャンネル適応信号処理をエコーキャンセラに応用する研究を行い,遠隔会議システムのための高品質な音響通信を実現することを目的とする. 騒音源が複数存在する場合には,複数の参照・センサを必要とするため,音響系は複雑になり,能動制御の性能が劣化してしまう.このような多入力のANCシステムにおいては,参照信号間に相関があることにより,計算誤差が大きく,打消し量が小さくなることを検討した.また,騒音の能動制御を広い空間で実現するためには,複数の打消すスピーカおよびエラーセンサが必要となる.そこで,複数のスピーカから放射された打消し音が空間で混じり合うこと(カプリング)により,適応アルゴリズムの収束速度が遅くなることを明らかにした.更に,影響を減らすための3つの方法について,有効性を理論,シミュレーションにより検討した. また,接続点が多地点の場合のエコーキャンセラについて,我々が提案する多点制御を複数の音響エコー経路が存在する場合における音響エコー経路推定への応用について検討し,2局以上の遠隔地の相手と円滑な通話をするために必要なマルチチャンネルエコーキャンセラのための適応アルゴリズムについて検討した.適応アルゴリズムとして2次の射影アルゴリズムを選び,ステップゲインを逐次変化させることで音響エコー経路推定の高速化が図れるため,最適なステップゲインの値を導出した.そして計算機シミュレーションにより,遠隔地の2地点で同時に発話している場合で音響エコー経路が変化しても2秒程度で会話に十分なエコー除去が可能であることを確認した.
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