研究概要 |
工業用途では,金属のような著しい鏡面反射特性やガラスのような透明な性質を有する物体の非接触3次元形状の測定が要求されることが多い.しかし,このような物体の3次元形状の測定は一般に困難である場合が多い.そこで本研究では,拡散物体,鏡面物体そして透明物体をも含んだ種々の光学的性質を有する物体の3次元形状を同一原理で測定できる装置を提案することを目的とする. 平成12年度は,物体の光学的性質のうちで不透明体について焦点を絞り,検討を行った.本研究では物体の表面反射特性をspecular spike成分が卓越している鏡面特性物体,specular spike成分がspecular lobe成分より優勢な中間特性物体I, specular lobe成分がspecular spike成分より大きな中間特性物体II, diffuse lobe成分が支配的な拡散特性物体の4種類に分類した.そして,本測定装置がそれらの4つの種類の反射特性を持つ物体に対して適用可能なことをシミュレーション及び実験により確認した.さらに,従来の能動的手法では困難とされた鏡面や拡散など異なる表面反射特性が混在する場合にも適用可能であることも実験により確認した. 平成13年度は,まず光学系の改良に取り組んだ.この改良により光学系の視野が広がり,測定対象の大きさの制限が緩和されるとともに,それぞれのレンズに対して,一本ずつスリット光を同時に投光することで測定時間が短縮されることが明らかとなった.次に,新たな画像センサの考案を行った.昨年度までの画像センサはスリット光の画素位置しか検出できなかった.本年度はスリット光の入射位置とともに入射角度も検出できるようにした.これにより,画像センサに入射したすべてのスリット光が3次元形状の算出に利用できるようになり,最後に光線追跡法による透明物体の3次元形状計測法の考案し,その有効性をシミュレーションにより確認した. 以上の本科学研究費助成金で行った研究の成果により,提案装置は鏡面物体や透明物体など種々の反射特性を持つ物体の3次元形状に対して有効であることが分かった.
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