研究概要 |
本研究は,既設鉄筋コンクリート桁のせん断補強に着目して,(1)外ケーブルによるせん断補強,(2)鋼板または繊維シートをウェブに接着することによるせん断補強,(3)外付け鋼材によるせん断補強を取り上げ,1)各種せん断補強方法がせん断補強効果に及ぼす影響,2)上記の方法によりせん断補強された部材の性状を明らかにし,3)上記の方法によるせん断補強が実際に適用できるように,せん断補強設計式を作成することを主な目的としている.本年度は,繊維シート補強に着目し,実験および解析を行った.成果は以下のようである. 1)炭素,アラミド両繊維シートによるRC梁のせん断補強は,せん断耐力の向上に対してかなりの効果があることが確認された. 2)はり上面における繊維シートの定着長が長いほどせん断補強効果が上がることが明らかとなった. 3)繊維シートの有効定着長を定量的に明確にすることはできなかったが,コンクリートの側面かぶりと最外縁の鉄筋を覆う長さ以上と考えてよい. 4)繊維シートにより補強されたRCはりのせん断性状について,有効定着長を考慮して,FEMにより精度よく求めることが可能である. 5)繊維シートの定着長を考慮した,せん断耐力算定式を提案した. 6)RCラーメン橋脚のはり部に同様な手法を用いてせん断補強を行い,載荷実験を行った.その結果,はりの断面の全周を繊維シートで巻いて補強した場合は,はりにせん断破壊が生じず,じん性のある破壊性状となった.一方,繊維シートをはりの上面に定着した場合は,変形性能の改善は認められたもの,シートが剥離し,最終的にはせん断破壊が生じた.
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