研究概要 |
本研究は,カルシウムアルミネート鉱物を多く含有する都市型廃棄物を原料としたセメント(EC)について,若材齢から硬化過程における塩素固定能を検討し,また固定された塩素が炭酸化を受けた場合の挙動をあわせて把握することにより,塩素含有量と鉄筋腐食の可能性との関係ならびに鉄筋コンクリート構造物への適用性について明らかとすることを目的とする. セメントにはECとして製造時の目標塩素含有量が0.05%,0.07%,0.1%の3種類,ならびに普通ポルトランドセメント(NC)を使用した.なお,比較のため,塩素含有量が目標塩素含有量0.05%ならびに0.07%のECと等しくなるよう,普通ポルトランドセメントに試薬のNaClを添加したセメントも用意した.W/C=0.40のセメントペースト供試体を用いて細孔溶液ならびに水和生成物の組成分析を実施し,D13異形鉄筋を埋設したW/C=0.60,寸法100×100×400mm,かぶり24mmのコンクリート供試体を用いて促進腐食試験(NaC1 3%溶液浸漬3日間+大気中暴露4日間の繰返し試験)を実施した. 細孔溶液の組成分析結果より,ECでは材齢1日以内に大半の塩化物イオンが固定されており,塩素含有量を強化したNCにおいても材齢3日以内に大半の塩化物イオンが固定されることが明らかとなった.細孔溶液中の塩化物イオン濃度と水酸化物イオン濃度の比は,鉄筋腐食が生じるとされる限界値3〜5を大きく下回り,炭酸化を受けて塩化物イオンが遊離した場合にもその値は非常に低いことが確認された.促進腐食試験を行った供試体においても,内在塩分に起因して鉄筋腐食の発生する傾向はECならびに塩素含有量を強化したNCのいずれにおいても見られず,本研究の範囲内の塩素含有量では,内在塩分が原因で鉄筋腐食が発生する可能性は低いものと考えられる.これらのことから,都市型廃棄物を原料として製造されたセメントは,塩素含有量が普通ポルトランドセメントより高いものの内在する塩分を固定する能力を充分に有しているものと考えられる.
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