研究概要 |
制御を用いた非定常空気力の測定は,原理的に慣性力の問題がないという大きな利点を持つが,試験体に制御力を加える方法が問題となる.本研究では,試験体を弾性支持し,支持バネの支点に制御変位を加える方法を提案している.この方法は,制御プログラムの変更によって任意の減衰を付与した自由振動応答にも対応できるので,極めてフレキシブルな空力弾性試験システムを構築できる. 本研究では,先ず,提案している方法で非定常空気力を測定できることを理論的に証明したのち,具体的に空気力を求める場合の計算式を誘導した.さらに,具体的な風洞試験を想定した数値計算により測定精度を検討した結果,コントローラのゲインとして10以上の値を用いれば,実用上十分な精度が得られるとの結論を得た.同様な数値計算によって制御系の安定性を検討した結果,安定性に関する問題は生じないとの結論を得た. 以上の準備の後,支持バネの支点変位を制御する方法の妥当性を検証するために,簡単な1自由度振動系の減衰特性を制御する実験を行った.予備実験の結果,制御系の時間遅れが予想外に大きいことが判明したため,予測制御を用いて遅れを補正し,極めて高い精度で減衰を制御することに成功した.このことから,ここで提案している支点を制御する方法が現実的であることが立証されたと考える. ただし,予測制御は外挿であるため,不規則な外乱が予想される風洞試験に用いるのは適当でないと考えられる.このため,遅れをコントローラの特性の一部であると考えて位相を補正する方法で非定常空気力を測定する実験を行い,理論空気力と比較検討した.実験の結果,空気力の実部は満足できる値であったが,虚部については極めて誤差が大きく時間遅れの補正方法に問題が残っていることが判明した.今般,ハード自身の遅れが少ない加振器を購入したので,今後,これを活用して本方法の実用化を目指したい.
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