研究概要 |
本研究は,既設橋脚の設計強度を考慮し,且つ地震時の耐荷力特性を向上させるために塑性域における靱性を向上させる補強法として鋼板貼り付け補強を行い,その補強効果について検討するものである。研究実績の経過は以下の通りである。 本研究では、2タイプの供試体について,単調載荷及び繰り返し載荷実験を行った。その結果,以下のような結果を得た。 1.タイプIは、貼付鋼板の板厚を従来(2.5mm)よりも薄くした鋼板(1.6mm)を貼り付けたものである。従来の鋼板を貼り付けた補強法では,既設橋脚に相当する(無補強)供試体に対して耐荷力が10%以上増加するものが大半であった。板厚の薄いものを貼り付けた場合,耐荷力の増加は単調で平均8%,繰返では,隙間幅の違いにより1%〜16%となったが,耐荷力は10%程度に収まるものが多く概ね良好な結果を得た。また,塑性率(μ)の増加では,単調で平均15%,繰返では耐荷力と同様隙間幅の相違により4%〜10%となった。以上のように繰返において,隙間幅の狭いものの結果が応力集中などの影響を受けて小さな値となった。 2.タイプIIは、供試体本体の板厚及び鋼板貼り付けの板厚を従来の2.5mmから、3.0mm程度に変更して、径厚比パラメータを厚めにしたものである。その結果、タイプIIでは、このタイプにおける無補強の最大耐荷力比に対して隙間10mmでは、単調で15.8%、繰返で60%の上昇となり最大耐荷力において既設橋脚(無補強)に対して改善されたことが分かる。また、同様に塑性率においても同様の比較を行うと、単調で82.0%,繰返で34%の増加となった。このことから、橋脚の強度を一定限度内に抑制しつつ、靱性を向上させる目的を十分満足することが分かった。
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