研究概要 |
生態系の縦横断移動を許容するなど,河川環境への影響を最小限に抑えるための横断構造物として,捨石堰の実用化を考えその環境水理機能を検討した.流れを堰上げて水位を維持し,流量を調節するという堰本来の機能を明らかにするために,水位-流量特性を水理実験によって明らかにした.平水時の利用を想定して水面が堰天端を越流しない場合(「多孔質流」と称する)と,出水時の構造物安定性を明らかにするために行われた堰天端を越流する場合(「完全越流」)を対象とした.まず,乱流多孔質流の抵抗則によって堰体内の流水抵抗を記述し,多孔質流の一次元解析を行った.これより,堰の上下流水深,間隙率,堰長など諸量の関数として堰通過流量を与える理論解が得られた.様々な堰条件のもとに神戸大学と岡山大学の大型・小型開水路を用いて水理実験が行われ,多孔質流の抵抗則に関するモデル定数が同定され,理論解と実験値との比較から解析の妥当性が検証された.完全越流においても多孔質流で確立された抵抗則を用いて,粗面開水路流-多孔質流の二層流として一次元解析が実施され,実験と良好に一致する理論解を得た.一方,堰体の安定性を評価するために間隙変動水圧を計測するとともに流れによる堰体の崩壊メカニズムを明らかにした.その結果,下流側路肩部で動水圧が最大となることがわかり,先の一次元解析結果によってもこれを証明した.このような河川構造物周辺の流れは生態環境や流砂系に大きな影響をおよぼす.近年,整備されつつある河川の画像監視システムを利用して,構造物周辺の局所流況を計測する画像計測法を開発し,得られた流速情報から流れの時空間構造を解析するためのアルゴリズムを確立した.生態構造は流れの規模や変動に支配されることから本研究成果は構造物の環境水理設計を実施する上で有用な情報を提供できる.
|