研究概要 |
本研究は,消波被覆材の安定重量の評価実験における不規則波の造波信号長に関する基準値を究明するため,まず不規則波実験における造波システムを開発すると共に,被覆捨石の耐波安定実験より被覆材の被災率に及ぼす造波信号データ長の影響および被災のメカニズムについて数値計算も含めて検討を行い,ついで被覆材の被災と作用波の履歴効果に注目して被災時の波群特性に関して統計・確率論的に検討を行ったものである.主要な結論は以下の通りである. (1)捨石の動的挙動シミュレーションより捨石の移動をもたらす限界波高の算定を行い,その限界波高以上の波高の発生確率について検討した結果,被災実験を行う際に不規則波の構成波数を考慮する必要性が確認された.被覆捨石の被災メカニズムについては,作用波履歴が関係するmemory型の被災プロセスであることが確認できた. (2)被災時とその直前の作用波の砕波相似パラメータξについて確率特性を検討した結果,被災時と直前のξの結合確率分布がワイプル分布で近似でき,2≦ξ≦3.5の領域に大部分が集中することが明らかになった. (3)被覆材にとって危険な状態における高波の波群の出現特性に関する統計解析では,高波の波群に関するランクをξ=3.5と2より算定した波高範囲に設定して,7種類の造波信号長毎に10000ケースのシミュレーション波形を対象に行った.2≦ξ≦3.5に入る波群の出現回数に及ぼす構成波数の影響は平均値で見る限り同じであるが,その出現回数の標準偏差については構成波数が少ないほど大きくなる. (4)限界波高以上の波高の発生確率および高波の出現回数の標準偏差と被覆材の被災率のバラツキが小さくなりほぼ一定となる構成波数600波を,被覆材の耐波安定実験における造波不規則波の構成波数に関する最小基準長の目安として提案している.
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