研究概要 |
地球上での水文循環の変化について長期にわたる河川流出量のデータベースをもとに変化傾向についての分析,および水資源の安定性についての分析を行った.使用したデータは世界河川流量センター(GRDC)が所有するデータベースから,流域面積25000Km^2以上でかつ60年以上の観測期間をもつ161観測所の月流量データを対象にした.その結果は 1.1961年以降に流出高が減少している地域(アフリカのサヘル地域が顕著),流出高が若干増大傾向の地域(北米ミシシッピー川上流域)が認められる.1961年以降の年流出高の変動係数がそれ以前より増大してきた傾向が一般的にうかがえる.この傾向は乾燥地域や半乾燥地域の河川に顕著である.地域間の各観測所相関に明瞭な傾向はなく,テレコネクションに相当するような現象は河川流出量からは認められない. また,月流量系列の変動をその平均化に要する貯水量との関係で分析する手法をとって,長期変化の傾向を調べたところ, 2.対象データに含まれる特異なデータを検出することが可能であること,例えば,1921年にはヨーロッパ諸河川において異常な渇水傾向が判断され,ライン川では約600年に1回程度の、少流出量が記録されたこと, 一方,サヘル地域の近年の渇水現象をセネガル川,ニジェール川,シャリ川,の河川流出量の記録で調べた.その結果, 3.これらの河川が1970〜80年代に異常な少流量になったこと,これらの河川では過去,1910年代,1940年代にも流量が減少した期間があり,長期の記録から見て約30年程度の弱い周期性をうかがわせること 4.この周期性を補強するために,当該地域の月雨量データを入手し(10カ国,172観測所の1950年以降のデータ)同様な解析を行ったところ,1970年〜1980年代に明瞭な少雨傾向が,1990年代には月雨量が増大傾向であることが多くの観測所で認められた.したがって,サヘル地域は1990年代,2000年代では雨量が増大傾向,2010年代に少雨傾向になると予想されることを結論として示した.
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