研究概要 |
本研究は、戦国・江戸初期において治水・利水事業の代表的指導者の一人として知られる肥後藩主・加藤清正およびその子忠広、さらにその後を継いだ細川家が熊本において行った、治水・利水事業を事例として挙げ、築造された水理構造物の年代、築造者、築造の動機と経過を原典の渉猟・現地踏査、模型実験および流れの数値シミュレーションにより轡塘(くつわども)および水制群の治水・環境機能を総合的に評価しようとするものである。 現存する近世の水理施設の現地踏査、古文書・古地図の調査さらには模型実験により流れおよび土砂の制御機能を解明することにより、現在に活用されるための方策について検討した。また、水制工の流水制御に関する基礎研究および複雑境界条件に適用可能な直接数値シミュレーション法を開発した。以下にその項目を列記する。 (1)近世に築造された水理施設の現地踏査 一級河川である菊池川、白川、緑川、球磨川および二級河川で築造された轡塘、乗越堤、堰、水制が築堤された場所の確認および現地踏査。古地図等で確認された近世の水理施設の設置場所を航空写真との比較照合により確認し、塘塘の歴史的経緯を明らかにした。 (2)轡塘および水制群による洪水流の制御機能 轡塘は、その水理学的機能について不明な点が多い。本研究では浜戸川島田地先の轡塘を忠実に再現した縮尺1/150の模型水路を用いて、3次元流速変動測定および流砂実験を実施し、低水路の流れと遊水地上の流れとの相互干渉、流れの3次元構造および土砂制御機能については検討した。また、越流型水制群および非越流型水生郡の流れおよび流砂に対する制御機能について明らかにした。 (3)流れの直接数値シミュレーション 本研究では,一般座標系regular格子を用いたDNSを自由水面乱流場へ適用し,その精度や有用性を定量的に検証した.さらに、縦筋河床および砂堆河床上の乱流特性、渦構造および二次流構造について明らかにした。
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