研究概要 |
本年度は,主に以下の点に関して研究を致しました. 1.前年度まで研究の対象としてきた粘土(S.A.クレー)に関して,不足していた浸食実験を行いました.さらに,その結果を基に,この粘土からなる粘着性土の浸食特性をとりまとめるとともに,浸食速度式に関する検討を行いました.その結果,粘土が塊状に浸食を受けるようなせん断力の場では,浸食速度は水含有率と作用せん断力の影響を顕著に受け,特に後者の3/2乗に比例して増大することが理解されました. 2.浸食速度に密接に関係すると予想される「材料の土質力学的強度(引張破壊強度)」を評価するための試験装置を考案し,これを用いた試験法を開発確立しました.さらに,この試験法によって上記の粘土の引張破壊強度を求め,この強度と浸食速度との相互関係を明らかにしました.たとえば,作用せん断力を一定として比較すると,水含有率一定の条件下で粘土含有率を変化させても引張破壊強度はほとんど変化しないのに対して,粘土含有率一定の条件下で水含有率を増加させると引張破壊強度が顕著に低下する傾向にあること,などがわかりました.これは浸食速度において見られる傾向とよく符合するものです. 3.これまでの粘土に変わってカオリナイトを対象として,浸食実験ならびに引張破壊試験を行いました.さらに,この結果を前述のS.A.クレーのものと比較することで,異なる鉱物からなる粘土が示す浸食特性の違いが理解されるとともに,これまで確立してきた浸食試験法における問題点が明らかになりました.たとえば,大きな粘着力を発揮する粘土の場合,厚さ5cm程度の供試体では,ある瞬間に一体となって浸食を受ける可能性があります. 4.河川に実際に堆積した粘土を採取し,これを対象とした検討も試みており,現地の材料を対象として浸食特性を評価する場合の問題点を明らかにすることができました. さらに,2年間にわたる研究のとりまとめを致しました.
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