研究概要 |
本研究では、高齢者のアクティビティひいては生活の充実度に影響を与える要因として、都市の規模や都市構造、さらには公共交通のサービス水準が、高齢者の活動としてどのようにあらわれ、また生活にどのような影響を与えるかという観点から分析を行い、高齢者に住みよい都市の在りようや、交通サービスの在りようについて検討したものである。都市構造をコンパクトにし,移動を容易ならしめるためには,自動車などの私的交通手段に頼らなくても,自由に移動できる環境が必要である。本年度は,高齢者や障がい者の交通需要の潜在化の状況と,これを顕在化するための都市交通システムのあり方という視点から研究をすすめた。 パーソントリップデータを用いてさまざまな分析を行った結果から、交通に時間を割かなくてもよい都市構造や施設配置が高齢者の生活の充実度を高めることがある程度把握することができた。また,コンパクトな都市(コンパクトシティ)における都市機能,住民の評価については,コンパクトシティにおいて空き店舗などを利用して高齢者の社会活動を支援するまちづくり「シルバーコンパクトシティ」に対し、利用者側の一般住民、受け入れ側の商店主とも約90%の賛同が得られ、コンパクトなまちづくりの可能性が示唆された。さらにコンパクトな都市を交通面から支援するタウンモビリティについては、都市中心部のモビリティ改善や中心部の活性化、交流促進にも役立つと期待されていることから、中心部での高齢者の交通手段としての可能性が示された。 これらのことから,高齢化がますます進展するわが国の都市において,交通抵抗をできるだけ小さくし利便性を高めるためには,空間的にも,機能的にも,コンパクトな都市づくりが必要であり,さらに交通面からは,都市内の移動を支援する公共交通の充実や,そうした交通システムまでのアクセス支援をあわせて行う必要があることが明らかとなった。
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