研究概要 |
本研究では,まず,道路の提供する機能とサービスの質について整理を行い,利用者の認識を反映したこれらの計量と評価が重要であることを示した.次に,走行快適性に代表される利用者認識は,走行環境に応じた車線変更挙動をモデル化することで,ドライバーのストレスとして間接的に計測可能であることを示した.走行調査データに基づき,高速道路単路部における各種の車両挙動モデルを推定し,これらを組み込んだ微視的交通流シミュレーションモデルを構築した.そして,効用関数の利用という間接的な計測方法による走行快適性評価値は,ドライバーの表明する主観的快適性評価値と同様の傾向を示すことが確認できた.また,実データを用いて,片側2車線高速道路区間における本シミュレーションモデルの再現性の確認を行ったところ,実現象を適切に再現可能であることが示された.以上のシミュレーションモデルを用いて,非渋滞流領域における様々な交通量レベルの交通状況を再現し,それぞれに対する区間平均効用値を算出した.その結果,交通量レベルの増加に伴い区間平均効用値が減少し,とりわけ,交通量-交通容量比が0.5および0.7付近で走行快適性が急激に低下することわかった.本手法を用いることにより,各交通運用状態における走行快適性の相違を,平均効用値という客観的計測値に基づき評価することができた.最後に,走行快適性と交通運用状態との関係を整理し,参考のためHCM2000によるLOSの上限値とも比較を行ったところ,本研究におけるドライバーの走行快適性変化の観点からみた交通運用状態の境界は,HCMの非渋滞流領域におけるLOS A〜Eの境界とほぼ一致した結果となった.最後に,高速道路単路部における交通状況と交通事故率の関連分析を通じて,サービス水準を安全性の観点から評価することを試みた.
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