研究概要 |
本研究では不確実な状況における個人の交通サービスの事前予約行動モデルと交通サービス供給主体の行動モデルを構築し,交通サービスにおいて予約システムの導入がもたらす社会的便益を評価した. まず,交通サービスの購入にあたって2つのリスクに直面した個人の事前予約行動をモデル化した.将来時点でチケットが購入できなくなるという供給側のリスクとチケットをキャンセルする可能性があるという需要側のリスクを同時に考慮した個人の意思決定過程をモデル化し,供給側のリスクが内生的に決定されるような合理的期待均衡モデルを定式化した.さらに,供給側の行動をモデル化した上で交通サービス市場の構造を分析し,予約システムがもたらす社会的便益について理論的に検討した.その結果,供給量が固定されている状況では,予約システムの導入により社会的便益は増加するものの,消費者余剰は減少することがわかった.交通管理者の規制により,供給者の便益を消費者に還元するシステムが必要となることを明らかにした. 次に作成したプロトタイプモデルの拡張を行い,実証分析に使用できるような実用的な事前購入行動モデルを構築した.当該年度の研究においては,基礎モデル構築の時点では無視してきたパラメータなどを加えて,より精緻化したモデルの構築を行った.さらに前年度に設計したアンケート調査を行い,不確実性に直面した個人の航空券予約における行動データを収集した.得られたデータから交通サービスの購入に直面した個人の事前予約行動と個人属性や目的などとの関係について実証的に分析した.
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