研究概要 |
本研究では、重油流出事故による沿岸域の環境災害に関する人々の意識(精神的被害を含む)に焦点を当て、沿岸域管理による環境保全便益の評価を行った。環境保全便益を評価することは、沿岸域管理によって守られる環境資源の経済価値を間接的に評価することにほかならない。ここで、環境資源の経済価値は利用価値と非利用価値に大別される。さらに、前者は直接的利用価値、間接的利用価値、随意価値、遺贈価値および代位価値に分類され、後者は存在価値に相当する。本研究では、これらの価値を同時に評価するために先行研究で提案された分析手法を踏まえて、各価値を評価対象財からの距離の関数として捉えることができる評価モデルを構築した。そして、沿岸域管理によって守られる環境資源には5種類の価値(利用価値、随意価値、遺贈価値、代位価値、存在価値)があるものと仮定し、各価値を同時に評価した。さらに、海岸からの距離を説明変数とした各価値の関数を用いて、愛知県・岐阜県・三重県の各市町村(名古屋市については区)における各価値を計測し、その結果を地図上に描いた。 その結果、各価値が海岸からの距離に依存しないと仮定した場合には、利用価値1,008億円、随意価値397億円、遺贈価値496億円、代位価値1,059億円、存在価値206億円、合計3,165億円であることがわかった。一方、各価値が海岸からの距離に依存すると仮定した場合には、随意価値と存在価値が距離(の対数)に比例し、その他の価値は反比例することがわかった。
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