研究概要 |
米国の軍事気象衛星により撮影された夜の地球表面の光強度画像データ(DMSP/OLS)について,経済活動の活発な地域ほど夜間の光強度が強いとの仮定のもとに,光強度とマクロ経済指標との整合性を検証した.アジアの20ヶ国を対象とした解析(1994〜1995)の結果,両者の関係は対数曲線で表現された.この関係を用いれば地域別経済統計データの有無にかかわらず,シームレスに地球表面上の経済活動の分布を捉えることが可能であると思われる.一方このデータを時系列データとして入手することが可能となれば,経済活動強度分布の時系列変化を捉えることができるのではないかという仮説にもとづき,世界に先駆けて,アジア地域における3時点(1992〜1993,1996,1998)のデータセットを構築した.その結果,アジア通貨危機(1997)の影響や,インド・パキスタン国境の緊張度,日本海における漁船の分布の変化等が確認され,DMSPデータ時系列解析の有用性が示された.また,このデータセットを中国の省級行政区単位に集計して指標化し,既存の社会経済統計指標と比較して,その代替性について検討した.今回作成されたデータセットは,撮影されている光の強度も反映されるような処理を行ったものである.このデータセットより加工された中国の省級行政区別年次別の灯光指数と,中国統計年鑑などに掲載されたいくつかの社会経済統計指標を比較した結果,単位面積当たりGDPや単位面積当たり電力消費量との間に高い相関関係が見出せた.ただし,ここでは上海市など一部の高度に開発された地域を除いていることや,国単位での解析例にも見られるとおり,一定の経済水準に達した地域では光量が飽和してしまう傾向があるため,こうした明瞭な相関関係が成立する地域や空間スケールに留意する必要がある.なお現在,地級・県級行政区を単位とした事例への適用などを検討中である.
|