研究概要 |
都市の廃棄物処理システム,下水処理システムを一つの都市静脈系循環システムとして捉え,両システムで回収可能な未利用エネルギー(ゴミ焼却廃熱,下水熱,下水の位置エネルギー,太陽光等)と資源(下水汚泥消化ガス)を回収し,相互にエネルギー源,資源として活用することによって,今後の処理技術の高度化,処理レベルの高度化によるエネルギー・資源消費量の増加を抑制できるシステムを提案することに取り組んだ. 平成12年度では,消化ガスの持つエネルギーをゴミ収集システムへ適用することの可能性と,それによる環境負荷物質の削減効果を明らかにした.1)消化ガスを用いたオンサイトの燃料電池(リン酸型燃料電池PAFC ; Phosphoric Acid Fuel Cell)による発電とこれの電気ゴミ収集車での利用,2)消化ガスからのメタノール製造とこれの燃料電池(固体高分子PEFC ; Polymer Electrotype Fuel Cell)ゴミ収集車での利用の2ケースを検討した.両システムでも,消化ガスを廃棄物収集・運搬に必要なエネルギーとして供給することは十分に可能であった.エネルギー消費量に対する供給量の比率は,オンサイト型燃料電池利用は4.3倍,メタノール改質型燃料電池利用は4.7倍であった.また,エネルギー相互利用により電気収集車や燃料電池収集車を利用することは,デイーゼルゴミ収集車の走行によって排出されていたNOx, SOxの量の大幅削減をもたらす.燃焼過程をもたない燃料電池の特性が大きく活かされた結果である. 平成13年度では下水の高度処理導入によつて増加すると予想される電力消費量を,処理施設内において回収可能な未利用エネルギーによって賄うことを検討した.高度処理導入によって,現行の下水処理(二次処理まで)に比較して,電力消費量がおよそ1.4倍に増加する.一方,下水道システムで未利用エネルギーを回収し発電すると,現行の下水処理場での電力消費量の55%程度を供給できる.この未利用エネルギー活用による発電量は,高度処理によって増加する電力消費量の約1.4倍であり,処理の高度化に伴う電力消費量の増加分を未利用エネルギーの回収によって賄えることを指摘した.
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