研究概要 |
コンクリート充填円形鋼管柱とH形鋼梁の柱梁接合部では,コンクリート打設用の孔が剛性不足を招くために,柱鋼管壁およびダイヤフラムが局部変形しやすい.従って,このような接合部では局部変形に対する耐力だけでなく,変形を予測することが必要である. そこで,本研究は,初年度において,2種類の外ダイヤフラム形式,有孔通しダイヤフラム形式および無補強の接合形式を持つ柱・梁フランジ接合部引張試験体24体の実験を行った.試験体は,以上の4種類の接合形式,柱鋼管の径厚比(30,40,60),および梁の破断が先行する場合と接合部と梁が同時に破断する場合の2種類の設計を実験変数とした.その結果,ほぼ,設計で目標とした耐力と破壊形式が得られた.ここで,接合部の破壊形式は,柱鋼管壁のパンチングシアー破断とダイヤフラムの引張破断であるが,ダイヤフラムで補強された接合部は,破断に至るまでの変形は大きく,建築骨組への適用に際して十分な変形性能を持つことが明らかになった. 最終年度は,一定軸力と地震力に相当する繰返し荷重を作用する十字形骨組試験体6体の実験を行った.接合部引張試験体と同様に,梁破断型と梁・接合部同時破断型の十字形骨組試験体を設計したが,最終的にはすべての試験体において梁接続部で柱鋼管壁のパンチングシアー破断が生じた.これは,繰返し加力による影響と見られ,実際の建物で接合部の過大な局部変形を許容することは危険を伴うと言える.ただし,実用上の変形性能は十分であることが確認された. 併せて,接合部の耐力や局部変形を予測する有限要素モデルを開発した.この有限要素モデルは,上記の実験結果を非常に精度良く再現した.これを用いて,パラメトリックな数値解析を行い,接合部局部変形に関する数値実験データベースを構築し,今後,これによって接合部の荷重変形関係モデルを回帰的に導出する予定である.
|