研究概要 |
本研究では,計算結果の信頼性の高い第一原理計算により電子系の有限温度効果を取り入れた,Tiのbcc-hcp変態,TiNiのB2-B19変態の断熱ポテンシャルを求めた。また,従来型のEAMポテンシャルを断熱ポテンシャルにフィッティングして格子系の振る舞いを動的にシミュレートした。 これらの研究を通じて得られた知見をまとめると 1.精密な第一原理計算によると,bcc-Tiの(110)TiNフォノンに対応する格子のシャッフルに対して強く不安定で,0.1eV程度の深い二重井戸型の断熱ポテンシャルを示す。 2.Tiは常圧からの加圧につれて,安定構造がhcp→(ω)→γ→δ→bccの順に出現することが予測された。 3.電子系の有限温度効果によって得られるbcc-hcp変態温度は実験結果よりはるかに高い。 4.従来のEAMポテンシャルでTiのbcc-hcp変態を再現するとされていたモデルは,この二重井戸の深さが極端に浅い。 5.より精確に断熱ポテンシャルを再現したEAMモデルを用いた動的シミュレーションでは,実験値よりはるかに高温まで低温相が安定である。 bcc系の有限温度での振る舞いを再現するためには,これらの計算では取り入れられていない格子欠陥の影響を考慮したモデルが必要とされている。
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