研究概要 |
立方晶系ポルーサイトを標的化合物に選択し、申請者が開発した多段階焼成法を用いて種々の立方晶系リューサイト化合物を合成した。さらに、これらの熱膨張特性を詳細に調べ、合成した化合物の熱膨張特性とその支配因子の関係を検討した。また、結晶構造内の各原子の配列を自在に操作でき、かつ結晶構造内の空隙を定量化できるパソコンのソフトウェアを試作した。 以下に、本研究で得られた成果をまとめる。 1.多段階焼成法を用いて立方晶系CsMSi_2O_6(M=B, Al, Fe, B_<0.2>Al_<0.8>, Al_<0.5>Fe_<0.5>, Al_<0.2>Fe_<0.8>)、Cs_2MSi_5O_<12>(M=Cd, Fe, Mg, Ni, Zn)およびRbAlSi_2O_6を、またリューサイト組成のアルカリ金属およびシリカサイトを他の原子で部分置換したCs_<0.875>Rb_<0.125>AlSi_2O_6、Cs_<0.9>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6、Rb_<0.9>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6、Rb_<0.8>Al_<0.8>Si_<2.2>O_6を合成できた。さらに、立方晶系CsMSi_2O_6(M=Al)のCs^+イオンをよりイオン半径の小さいNa^+イオンで部分的に置換したCs-Na-リューサイトを多段階焼成法によって合成した。 これらの合成したリューサイト化合物の結晶構造(立方晶、空間群Ia-3d)をリートベルト解析で明らかにした。 2.合成したリューサイト化合物の熱膨張特性を低温および高温XRDを用いて123K〜1273Kの温度範囲で詳細に調べ、得られた結果をデータベース化したところ、これらの熱膨張特性は四面体を構成するM/Si比に依存している可能性を見出した。また、合成した置換型化合物の熱膨張特性は、Na置換量の増大に伴って熱膨張率が減少することを明らかにした。 3.合成した化合物の空隙率と平均熱膨張係数には相関性があり、空隙率の増大に伴って平均熱膨張係数が減少することを見出した。また、3次元骨格構造の相違はCs^+イオン量の減少にともなう熱膨張特性を決定すると考えられた。 4.熱膨張特性の支配的因子を探索するための手段として、結晶構造内の各原子の配列を配位多面体を用いて簡素化するソフトウェアと結晶構造内の空隙を定量化できるソフトウェアを開発した。 5.Cs_<0.9>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6のCsをLiで部分的に置換したCs_<0.8>Li_<0.1>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6及びCs_<0.7>Li_<0.2>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6を合成し、その熱膨張特性を調査した結果、800℃でCs_<0.8>Li_<0.1>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6では約0.11%、Cs_<0.7>Li_<0.2>Al_<0.9>Si_<2.1>O_6では約0.08%の熱膨張率を示した。 このことより、本研究で見出した指針により優れた低熱膨張特性をもつ立方晶系リューサイト化合物を設計・合成できることが分かった。
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