研究概要 |
比較的剛直なセルローストリアセテートCTA(T_g≒190℃)と柔軟性に富むポリブチレンサクシネートBN(T_g≒-32℃)が分子オーダに近い状態で混合したブレンド物が作製できことを明らかにしている.このブレンドにより,新規な材料特性を持つ生分解性材料を開発出来る可能性があると考えられる.しかし,その生分解(含加水分解)特性や分解機構を明らかにしなければ,実用の面から問題を呈することになり,新規生分解性複合材料が開発されたと言い難い.本研究では,加水分解がCTA/BNブレンド物の物性や分解機構に及ぼす影響を検討する.ここで,加水分解に注目する理由は,この分解が通常の場合,酵素分解と同時に自然に起こる現象であり,また加速試験が行えるためである. BN/CTAブレンドへのTP(チタニュウムイソプロポキシド)添加が,ブレンド物の物性に及ぼす効果を検討し次の結論を得た. 1.TP添加により,フィルムの透明性を示すブレンド範囲が拡大できる.2.TPは,CTAよりBNと強い相互作用を持ち,フィルム調製中の溶液粘度を高める.しかし,この相互作用は,FT-IRやNMRでは確認できないほど弱い.3.TPは,φ_<BN>=50〜70の範囲でBN成分の結晶化を阻害する.4.TP添加は,ブレンドフィルムの分解温度を低下させる効果があり,BN含有率の増加によりその効果が大きくなる.5.TP添加は,ブレンド物の力学特性に大きな影響を与えない.6.TP添加は,ブレンド物の加水分解性を著しく高める.TP未添加ブレンドフィルムの加水分解は,CTA含有率の増加に伴い著しく抑制される.7.TP添加は加水分解によるPBSの分子量低下を促進し,ブレンドフィルムの加水分解性を高める効果がある.8.TP添加は,ブレンドフィルムの蒸気透過性に影響を与えない.9.TPは,PBSのエステル結合部に影響を与え,PBSの主鎖を切断する.
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