研究概要 |
平成12年度〜平成14年度にかけて,科学研究費補助金の支給を受け「粒子懸濁高分子液体の流れの流動解析」に関する研究を行った. この研究では,高分子をメゾスケールの分子モデル,例えばFENE(Finitely Extensible Nonlinear Elastic)ダンベル,でモデル化し,この分子モデルの運動をブラウン運動学に基づき計算する.このモデル分子の運動は,粒子が存在しないときには流れ状態とブラウン運動によって決定されるが,周りに粒子がある場合には,当然粒子の運動に影響される.逆に粒子も周りに存在するモデル分子の影響を受ける.そして,液体内に生ずる応力は,粒子の配列状態とモデル分子の形態・配列状態により決まるので,懸濁液の流れ状態が計算できる.また,この方法ではモデル分子ならびに粒子の運動を直接計算するので,高分子と粒子の相互作用のメカニズムが理解しやすい. この問題の解法としては,ここで提案した方法が適切であると考えられ,構造を有する複雑流体の流れのメカニズムを解明するには,連続体的アプローチでは不可能で,連続的に変形を受けている状況で流体のミクロな構造がどの様に変化するかを確実に捉えることが不可欠である.しかしながら,この3年間では,元来の目的である「粒子の配列に影響を及ぼす粒子と高分子の相互作用のメカニズム」についてはほとんど結果を得ることができなかった. 従って,最適な粒子配向を有する粒子強化複合材料の成形過程を実現するためには,今後も,ここで提案したアプローチを改良・発展させていくことが必要であると考えられる.更に,最近では,マイクロ・コンポジットに関する研究が盛んに始められており,この分野についても,このアプローチがマクロ・コンポジットの場合よりも一層重要であると思われる.
|