研究概要 |
アルミニウム合金へのScのすぐれた添加効果の機構解明にとつて重要な,Al_3Sc化合物相の析出挙動の研究およびアルミニウム中のScの不純物拡散係数の測定を主目的とした。Al-Sc合金およびAl-Mg-Sc合金でのAl_3Sc化合物相の析出挙動を電気抵抗測定,および核磁気共鳴測定等によって研究した.Al_3Sc化合物の析出の速度論的研究から,その速度定数を決定した.拡散に関しては,広い温度範囲でアルミニウム中のScの不純物拡散係数を自ら製造したその放射性トレーサーを用いて測定した.低温域ではアルミニウム中でのScの拡散速度は他の遷移金属元素よりも大きく,Al-Sc過飽和固溶体の分解速度が他の遷移金属元素を含有するアルミニウム二元合金のそれよりも著しく大きい結果を裏付けることが出来た.アルミニウム中のScの拡散係数の結果とAl_3Sc化合物の析出の速度論的研究から得られたその速度定数を結びつけて,Al_3Sc化合物/α-Al固溶体の界面エネルギーを評価した.その値は,従来報告されている,アルミニウム合金における他の非整合な析出物のそれよりもかなり小さいことがわかった.低濃度合金での析出研究に極めて有用な核磁気共鳴法によって,Al-Sc系およびAl-Mg-Sc系のアルミニウム側のScの固溶度の再評価およびAl-Sc合金およびAl-Mg-Sc合金におけるAl_3Sc化合物の析出の速度論の比較を行った.純アルミニウムにおけるScの固溶度は既発表の藤川の結果の妥当性が裏付けられた.Al-Mg系でのScの固溶度は純アルミニウムにおけるよりもかなり小さく,その温度依存性が大きいことがわかった.Al-Mg-Sc合金におけるAl_3Sc化合物の析出速度はAl-Sc合金におけるよりもかなり速いこともわかった.これらの結果はAl-Mg合金への顕著なSc添加効果を理解する上で,極めて重要な結果と思われる.
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