研究概要 |
地球の安全環境を守るためのCO_2の削減ならびに材料のリサイクル率の向上がきわめて重要な社会問題となっている。このCO_2を削減する方法のひとつとして、高比強度、高耐熱強度、高衝撃破壊靭性ならびに良好な塑性加工性能を具備した材料を開発することの重要性が指摘されている。この目的を達成するためには、軽くて強度が大きい安価なA1基合金を用いることが不可欠である。 一方、周期構造を持つ結晶に基づいた強化法の範疇内では、高強度と高耐熱強度を兼ね備えたAl合金を作製することが困難とされており、結晶以外の準結晶や非晶質の非周期構造相を利用することが重要と考えられる。 本報では、高硬度、高耐熱性を持つが極めて脆い準結晶のナノ化を図り、fcc-Al相中に分散させたナノ準結晶粒子分散Al合金を作製し、この組織および機械的性質を調べ下記の結果を得た。 1)液体急冷法で作製した93〜95at%の高A1濃度Al-Ln-TM(Ln:希土類元素、TM遷移金属)およびAl-ETM(ETM : Ti, V, Cr, Mn)-LTM(LTM : Fe, Co, Ni, Cu)系合金の組織が、周期律表でのTM元素の族番号の減少に従って、Al+化合物→Al+準結晶→Al+非晶質→非晶質へと系統的に変化することを明らかにした。次に、これらの知見に基づいて合金設計を行い、実用的な観点から粉末冶金法により非周期構造相を持つAl合金P/M材を作製した。 2)200〜900nm径の準結晶粒子が分散したAl合金P/M材が作製できた。 3)準結晶粒子分散Al合金P/M材の引張強度は540〜670MPaを示し、最高引張強度の670MPaはAl-Fe-Cr-Ti合金P/M材で得られた。この値は、商用の最高強度を示す超々ジュラルミン(600MPa)よりも優れている。 4)準結晶粒子分散Al合金P/M材の573Kで100hr保持後の引張強度(耐熱強度)は、耐熱Al合金の目標値である300MPaを大きく上回った。 5)準結晶粒子分散Al合金P/M材の耐摩耗性は、商用のA390-T6アルミニウム合金に比べて、高すべり速度域で優れていた。
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