研究概要 |
Si(100)基板に厚さ1μmのTi-50at.%Ni薄膜をスパッタリング法で合成した.薄膜合成時の基板温度を523K以上とすることで,結晶化した薄膜を後熱処理することなく得ることができた.収束イオンビーム加工装置を用いて基板-薄膜界面観察用試料を作製し,透過電子顕微鏡(TEM)観察した.結晶化したTi-Ni薄膜の明視野像では,直径約200nmの柱状晶が観察され,室温で得られた制限視野電子回折図形の解析から,B19'マルテンサイトであることが明らかになった.さらに,Si(100)で作製したカンチレバー上にスパッタリング法で厚さ約1μmのNiMnGa強磁性膜を合成し,バイモルフ型アクチュエータを試作した.基板を加熱せずに室温で成膜した場合は結晶化度の低いほぼ非晶質の膜が形成されていたが,873K以上で適当時間熱処理すると完全に結晶化していた.また,基板温度を623Kあるいはそれ以上に保持したまま成膜した場合は,直径約200nmの柱状結晶の膜が形成されていた.結晶化したNiMnGa膜は強磁性であり良好な形状記憶合金特性を示した.膜のTEM観察及びX線回折試験結果から,L2_1オーステナイト相から斜方晶マルテンサイトへ変態することを示唆する結果が得られた.カンチレバーを加熱冷却することで測定できるカンチレバーの変位量,Damping特性等も評価した結果,室温で成膜後熱処理したカンチレバーの温度-変位特性は,後熱処理温度に依存しており,熱処理温度が高いほど変位量も大きくなることが明らかになった.これらの調査結果から,マルテンサイト変態と逆変態を伴いながら大きな変位が得られたのは,基板温度658Kで成膜したもの,及び室温で成膜後873Kの後熱処理したものであること等が明らかとなり,膜合成法に関する多くの知見を得ることができた.
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