研究概要 |
本研究において、裏当金あるいは裏当材を用いずに、ルートギャップ変動に関わらず、良好な溶接結果を得るための片面裏ビード溶接システムを構築する。ここではトーチを開先内にて揺動させるのみならず、進行方向に対して前後にトーチを動かすスイッチバック溶接法を提案し、これを用いる。具体的には、トーチ前進時に母材ルートエッジに熱を与え溶融し、トーチ後退時に溶滴をルートエッジに溶着させ、ブリッジを形成する。溶落ちが生じる前にトーチを高速で前方に移動させる。この動作を繰り返すことにより、融合不良をなくし、安定に裏ビードを形成する。これを行うために、1)トーチモーション(ウィービング幅、溶接速度)、ワイヤ送給速度および電源特性の協調動作を行うためのハードウェアの製作:溶接線追跡とともに、安定な溶融池溶込み形状を維持しなければならない。トーチがルートエッジに近づいたときに、電流を高くし、溶滴離脱を行う。コンピュータと溶接ロボット、溶接電源およびワイヤ送給装置とのインターフェイス回路を制作し、トーチ位置に従って、電流波形およびワイヤ送給速度の協調制御を行った。2)定常状態のみならず過渡応答におけるアーク長および突出し長のリアルタイムセンシングを可能とするための手法について提案した。3)初期突出し長と各サンプリング時における電流,ワイヤ送給速度を用いて突出し長を検出するニューラルネットワークモデルを構築した。過渡応答を示す基礎的な溶接実験により,このニューラルネットワークの妥当性を確認した。検出された突出し長と電圧・電流よりアーク長を算出することができ,アーク長のセンサとして適用可能であることを示した。これを用いて、トーチ遥動中心位置の前進時に開先形状の計測も可能となる。
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