研究概要 |
現在,電気・電子機器の基板配線にはスズ・鉛はんだが主に使用されているが,環境問題から鉛を含まないはんだの開発が世界各国で急務となっている。本研究は,最近報告者が独自に発見したスズ合金の融点の予測手法を応用し,従来のはんだに替わる新しい鉛フリーはんだを効率的に開発することを目的とした。 初年度に1次候補合金の選定として,スズをベースにした合金でAg, Bi, Zn, Inを添加し,融点がスズ・鉛はんだと同等の456K前後になるように設計された合金17種を試作した。これらにつき,融点の測定を行ったところいずれも453〜466Kの範囲内で,融点予測法の妥当性・有効性が確認された。次年度では第2次候補合金の選定に当たり,設計参考データとして強度、比抵抗、銅基板とのぬれ性におよぼす個々の合金元素の効果の把握が必要と判断されたため,Sn-1mol%M(M=Ag, Sb, Bi, In, Pb, Cd, Zn)2元合金を作成し,これら特性におよぼす添加元素の効果を詳細に検討した。その結果、いずれの元素を添加してもSn合金の強度は上昇させるがその効果はBiが最も大きいこと,比抵抗に関してはこれら合金元素の添加により上昇するが導電性を害する程度の増加には至らないこと,ぬれ性に関してはZnが最も有害でAgおよびBiがSnのぬれ性を向上させる元素であることなど諸特性におよぼす合金効果が半定量的に把握された。得られた情報をもとに,次世代鉛フリーはんだとして有望視されているSn-3.5Ag-0.7Bi合金より低い融点(476Kおよび456K)を持つ合金計6種をそれぞれSn-ZnおよびSn-Bi系でAgおよびInを添加元素として設計した。これらのはんだ特性を評価したところ,Sn-Zn系で次世代はんだど同等の強度,Sn-Bi系で同等のぬれ性をもつ合金が得られ,スズ合金の融点予測法を援用することにより鉛フリーはんだ合金が効率的に設計できることが示された。
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