研究概要 |
21世紀には種々の部品の小型化がさらに要求されると考えられる.金属の表面への微細表面形状の転写をナノメータオーダーの精度で塑性加工できる可能性を検討した. 微細表面形状の転写精度を3次元的に定量評価する方法を考案した.AFMにより取得した3次元形状データをアスキーファイルとしてして取り出し,ワークステーション上で構築している形状精度評価ソフトに適用した.このソフトウエアでは被加工材形状の空間的凹凸反転と鏡映対称反転を施した後,工具形状データと重ね合わせ,表面が評価空間で1点でも接触したらそこを限界としてまず平均隙間を評価する.次にその接触点が特異点である可能性を考慮して,数点の接触まで接近させて評価する.さらに空間の平均すきまを最小にする平面的重ね合わせ位置・角度を探索する.これによって転写精度の3次元的評価が行えるようになり,転写工具と被加工材の形状差は平均厚さで40nm以下に来ていることが確認できた. 加工法を開発するために順加工式超微細表面圧造装置を試作した.2段階あるいは多段階成形によりバルク成形と微細表面形状の成形とを分離した加工を可能とした.超微粒子超硬合金工具表面をRz30nmまで鏡面研磨仕上げを行い,そのうえに溝状のパターンと三角錐形状の窪みを形成した.この形状をAFM(原子間力顕微鏡)により計測したのち,アルミニウム円形素板に対して,2段階で微細形状転写を行った.素板外周部に巨視的盛り上がりを許すゾーンを設定してバルク変形を誘起させた.予備成形の荷重を変えてバルク変形量の異なるブランクを得たのち,同一の荷重で第2段階の微細表面形状の加工を行った.その結果予備成形を行うことでより高い盛り上がり・充満を得られた.これにより150nmの窪み深さに対して60%ないし90%の充満が得られ,ナノスコピックな転写の可能性が実証できた.
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