研究概要 |
チタンは鉄鋼、アルミニウムに次ぐ第3の金属と言われ、今後、航空宇宙産業、化学プラント、海洋、医療などの分野への利用が期待されている。現状ではチタン資源の9割は顔料用酸化チタン(主にルチル、TiO_2)として使用されているが、今後は、イルメナイト鉄鉱.(FeTiO_3)がより重要な資源になると考えられる。さて、現在、インドではイルメナイト鉄鉱を選択浸出法によって処理し合成ルチルを得ている。しかし、この方式では鉄分残さ処理が困難な現実がある。 その対策として、本研究において一つの新処理プロセスを提案した。即ち、平成11年度に開始した日本-インド間共同研究の一環として、インド産イルメナイト鉄鉱をH_2S含有還元浸炭性反応ガスにより高温にて化学反応させることによりルチルと炭化鉄(Fe_3C)を同時合成し、その後に磁力選鉱し、両反応物が単独で得られる可能性を探索する。これによって浸出処理を省略でき、廃棄物対策、資源の有効活用を図ることを企図した。なお、炭化鉄は鉄スクラツプ代替の新鉄源として製鉄業界で最近特に興味が持たれている。 平成12、13年度には、以下の結果を得た。 1.横型固定層反応装置(25mm径石英反応管、試料1gram)にてイルメナイト鉄鉱(Ore I)と上記ガスとを800-1000℃の温度範囲で等温反応させた。反応生成物として酸化鉄(Hematite, Magnetite, Wustite),金属鉄Fe,炭化鉄Fe_3C(θ相),遊離炭素,Rutile(TiO_2),Magneli相Ti_nO_<2n-1>(n=4〜9),Ti_3O_5を認めた。反応前期ではイルメナイトの金属鉄とルチルへの還元が進行し、反応後期では金属鉄の炭化とルチルのより低級酸化チタンへの還元が進行した。化学分析とX線回折より求めた定量補正式より各生成物濃度を算出した。試薬より作成した合成イルメナイトの同様な反応実験も遂行した。その結果、合成IlmeniteのTiO_2化速度は鉱石Ore Iよりも多少遅かった。Ore I中のFe or θ相は多孔質Ti酸化物中に約5μm径の粒子として分散していた。還元浸炭性反応ガス中微量H_2Sは煤生成を抑制し、炭化鉄生成を促した。合成Ilmeniteでは、ほぼルチルと炭化鉄が同時合成された。 2.Ilmenite鉄鉱と合成Ilmeniteの所定の酸素と硫黄分圧を有するH_2-H_2O-H_2S還元性ガスとの反応実験を800-950℃の温度範囲で遂行した。両試料ともルチルと金属鉄が同時合成された。 今後、磁力選鉱によってルチルと炭化鉄が単独で得られる条件、可能性をさらに探索する。
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